無垢。


 憑き物は落ちました。これで安心して年越せます。

CWC:セパハン 1 - 3 浦和
得点者:32' 永井雄一郎(浦和)、54' ワシントン(浦和)、70' オウンゴール(浦和)、80' マフムド・カリミ(セパハン

 不安一杯で迎えたクラブW杯初戦という名のACL決勝延長戦でしたが、蓋を開けてみればまさかの快勝。シーズン終わりにきて、こんな無垢な状態のチームが見れるとは。完全にチーム崩壊しての失冠による脱力とその後の休息、そして「とりあえず預けとけ」のポンテ、「とりあえず走らせとけ」の達也、山田さんと平川の両サイドというチームの核が根こそぎいなくなったことが、こんな無垢な浦和を生んだんでしょうか。結果として、なんかすごい日本っぽいチームになってて、驚いたような納得したような。
 脱力&休息の効果がはっきり出ていたのが、この日はボランチでコンビを組んでいた啓太と阿部。特に啓太については、久しぶりに「利いていた」と言えるんじゃないでしょうか。あまり言いたくないことですが、シーズン終盤の啓太は完全にガス欠で、出足の一歩目が鈍く五分五分のボールを奪う力も、こまめに顔を出してボール散らす力もなくなっており、大失速の原因の一つとなってしまってました(ここまで酷使に耐えてよく保ったという思いの方が強いので「言いたくないこと」なのですが)。そして、それでもなんとか頑張ろうとする姿が、悲壮感を生んでいたと。それが、この日は実に体も心も軽そうで。久々にイキイキとしてるの見て、ホッとしました。無垢な状態ながらも、散漫にならずに「日本っぽいチーム」として機能したのは、一番日本人選手っぽい選手である啓太の影響力の回復のおかげです。
 そして、核の消失の方の恩恵を受けたのが、相馬。試合後のインタビュウで、他の選手たちがあの失意からの復活をしみじみ喜ぶようなコメント出してる中で、「Jリーグでやれよって感じ」「今日はクリスチアーノ・ロナウドのプレー見てきた」と、まあ能天気というか何というか、「そりゃ浮くわな」と納得するのに十分な発言っぷりでしたけど。このパッパラパーな分かりやすさと、その裏返しの入れ込み癖が、チーム全体の無垢さに適度に味付けし、適度に薄められて、程よいところに落ち着いたという感じでしょうか。本当なら、ワシントンが「ポンテ不在だしここは俺が核だろう」とか勘違いしそうなところですが、横浜FC戦でまたブー垂れたて周囲の反感買ったらしいのと、後ろ盾のポンテ不在で、代わりが一番反感持ってそうな長谷部だったことで、「プラス1」に収まっていたのも相馬にとっては幸いでした。
 ところで、あまりに元気なかったセパハン。カゼが蔓延してるという話は本当だったよう。ついイラン人のしぶとそうな顔見てると忘れがちになりますが、彼らも同じようにこの1年、ACL戦ってきたということですね。そんなセパハン側からすれば、この日の浦和の唐突な溌剌さ加減は聞いてないぞとゲンナリしたでしょう。別のチームじゃねえかと。お疲れ様でした。

A. 3

 こんにちは。

J1 第34節:浦和 0 - 1 横浜FC
得点者:'17 根占真伍(横浜)


 あと1試合、あと1試合なら。選手たちは踏ん張って何とかしてくれるのではないか。あるいは、あと一人くらい、今年再三助けてもらった"新戦力"(私は小野にそれを期待してたし、達也に期待してた人もいるでしょう)が現れてくれるのではないか。と願っていたのですが。何も起こらず誰も現れず。待ってた答えは3、「現実は非情である」という。
 ここまで、信じ難いほどの「チームとしての精神力」を見せ続けてきた選手たちですが、この日はもういけませんでした。選手個々は必死にあがいていましたけど、それが「チームとして」の何かを生み出すことがなかった。それこそが、というか、ほとんどそれ"だけ"がこのチームの強みだったのに。
 試合立ち上がり、横浜FCの最初のCKの時に、ポンテと永井、2人が前線に残ってるのを見た時に思わず溜息が出てしまいました。ああ、見失ってると。普段の浦和なら、まずポンテ一人残してあとは全員守備。この日は闘莉王不在なのだから、なおさら(一応は)高さのある永井は守備に戻るのが本来のはず。とにかく勝ちさえすればいい試合なのだから、まずは失点をゼロに抑えようそうすれば90分のうちに1点くらいは何とかなるだろう、というくらいの意思統一は、これまでは当然のようにやってきたのですが。「勝ちさえすればいい」ではなく、「勝たなくてはいけない」「点を取らなくてはいけない」という意識に囚われてしまっていました。そこまで余力がなかったのか…。いや、余力はもっと前からなかったはずで、それでも崩れずに淡々とサッカーをしてきたのですけど。ACL準決勝・城南戦での激闘による燃え尽き感(あれが頂点だったのは間違いない、以後は決勝のセパハン戦も含めほとんど惰性)、あるいは、その城南戦の直後に山田さんを失い、啓太がキャプテンマークを巻くようになったことが、このチームには余計なものでしかない悲壮感を漂わせるキッカケだったのではないかとか思ったりしますが。
 で、明日はクラブW杯ですって。まだ終わりじゃないんですね。相手はやっぱりセパハン。三度目の対戦ですが、どんな試合になるのか。…あまり想像したくないですが。しかし、リーグ優勝を失い、ポンテも失った今、これ以上失うわけには。ここでアジア2位のセパハンに負けたら、いよいよこの1年は何だったんだということになりかねませんから。


                        

最後の山、というか穴。

 フフン。これまでは上手くいっていた相手、状況に合わせる戦い方でしたが。落とし穴が最後に待っていました。

J1 第33節:浦和 0 - 1 鹿島
得点者:66' 野沢拓也(鹿島)

天皇杯4回戦:浦和 0 - 2 愛媛
得点者:65' 田中俊也(愛媛)、82' 田中俊也(愛媛)

 降って湧いた数的優位という状況に合わせようと、無理にテンション上げようとするも体が付いていかずにすっ転んだ鹿島戦。平日夜、寒々しい雰囲気のスタジアム、J2下位相手の天皇杯初戦という状況に合わせすぎて、ただただ低レベルだった愛媛戦。必然の2連敗でした。勝つしかない週末の横浜FC戦は、最後の精神力を振り絞ってくれると思います。思いたい。とりあえず、ワシントンは空気読むように。イライラして、一人で違う方向に精神力消費したりはやめてくださいませ。あと、永井は空気読まない一撃を。
 精神的なこと以外も書けば(このチームはほとんど精神的な何かで出来てるんですけど)、この2試合、大きな敗因は山田さん、平川という1番手を欠いてる両サイド(もう一つ、闘莉王の雑さ加減というのもあるんですが、あの野郎は最後、出場停止なので放っておきます)。相馬・細貝は、愛媛戦では攻撃面で全く機能しないだけでなく、守備でもきっちり1失点ずつ絡むというボロボロぶりで、ちょっと使えない状態。ワシントン・永井という重い2トップを支えるには軽量すぎますし。清水戦では悪くなかった相馬ですが、孤立しやすい3-5-2だと途端に判断の悪さから自壊。勝手に「勝負するか、しないか」の2択で考えられても困るんですけど。しかも、その2択で答え間違ったり。細貝は、持ってる能力からすれば山田さんのバックアップには一番合ってそうなのですが、ここまでろくに使ってこなかったおかげで、連携(特に坪井との)が悪過ぎるのがどうにもならない。サイドとCBの連携というのは、今年の浦和のキーなだけに厳しい。週末は、平川は何とか戻ってこれそうなので、その逆サイドを何とかしたいのですが。阿部だと、闘莉王出場停止、堀之内負傷の最終ラインが手薄になるし、岡野は悪くない気がするけど90分は厳しいし。あと残ってるのは…小野とか? 小野、小野かあ。本当は去年同様、天皇杯要員のはずだったんですけど、なくなっちゃったし。やってくれないだろうか。そうすればもう、チャラにしますから色々。

清水戦補足。

 もうちょっと書いておきたいことあるので補足。
 ところで、昨日はU-22代表が北京行き決定。おめでとうございます。当初のチームから平山、家長、梶山というロマンをしょっ引いて、岡崎、柏木、細貝という現実で妥協して、特に夢も希望もないけど最低限の結果は得るというのは、反町監督らしい。新潟監督時代の最後の年も、開幕前はチェルシーだかバルサだかを目指すとか言っておいて、結果出ないと見るや、あっという間に日本人で守ってブラジル人で攻めるサッカーに転換してましたが。ちょうど反町新潟最後の試合の相手が浦和だったんですけど、あの時も長いことやってたわりに何の蓄積も感じないチームでした。今後も、本番までにロマンを試すことはあっても、追求することは出来ない、かといって現実を追求するほども割り切れない監督だと思いますけど、どうなっていくんでしょう。
 で、清水戦の補足ですが。何人かの選手について短評を。

  • 坪井:突如の復調で相手FWに仕事させず。ACL終わって気が楽になったとはいえ、過密日程の中で急にコンディション上がるとも考えにくいですから、とするとやはりACLでの不調は、外国チーム相手だと緊張してしまうということなんでしょうか。日本代表でのプレイぶり見ててもそうじゃないかと思ってたんですが。ともあれ、「'07年の浦和」のキーマンの一人は坪井だと思ってたので、調子戻してくれるとこの後のまとめも書きやすくなります。
  • ネネ:坪井に劣らず能力あるところを見せていたネネ。切ろうかなという時にこういうの見せられて、ここ2年、思わず契約延長してしまったわけです。控えに代わってくれそうな選手もいなかったので、この日はちゃんと90分プレイ。やれば出来るんです。
  • 長谷部:このところ、「昔の輝きが戻ってきた!」ともっぱら評判の長谷部。別に昔も今も、ずっと変わってないと思いますけど。坪井と同じく、この日程でコンディションが上がるわけはないので、こちらも精神的な問題だったのでは。元々、責任感が強過ぎるくらいで、チームのためなら自分を殺す選手。そもそも輝きを失ったのは、左サイドに三都主が来て、その守備面での穴埋めに奔走するようになったからで、さらに、ポンテ、小野まで加わったとなると、どうしても性格的に守備に気を遣わざるを得なかった(前任の山瀬に対しては全然気遣ってなかった)。それがこのタフすぎる状況で、いよいよポンテ神も疲れてきたし、両サイドも疲労困憊、ワシントンなんざ端からあてには出来ないし、となると俺がやるしかないだろう、みたいな方向で責任感が発揮されたのがここ数試合なのかなと。
  • 内舘:啓太のアクシデントで久々の長時間出勤。入ってすぐはまだ体も心も準備できてなかったのかフワフワしてましたが、温まってきてからは啓太の穴をしっかり埋めるスムーズなプレイぶり。まだまだ錆付いてない、どころか、年々上手くなってますよね。妙に小洒落たパスとかも見せますし。あわやの弾丸ミドルは、マンチェスターU戦(ちょうどこの日の午前中、PC内の映像整理してる時に見てたんです)でファン・デルサールをぶち抜いてニターッと笑ったシュートを思い起こさせました。昔はキック力なくて、サイドからのクロス(そう、昔はサイドやってたんですよね)とかみんなショートしてたものですが。
  • 平川:前回進歩を誉めましたが、スタミナについては伸びてないです。最後、足止まるのは、まあしょうがないとしても、頭の回転まで完全に止まって、廃人同然になってました。まあ、それでも当然のように最後まで放置されてたわけですが。

立直。


 「オシム倒れる」の報せで、うかれムードも吹っ飛びましたが。それでもJリーグは続く。回復を祈ります。

J1 第32節:浦和 0 - 0 清水
得点者:なし


 歓喜ACL決勝から中三日。ワシントン(累積警告)、山田(肉離れ中)、小野(どっかケガ)、堀之内(打撲)に加えて、達也も謎のベンチ外で欠場。さすがに人手、特に前線が足りない中で採用したのは、ポンテ、長谷部2シャドー、永井1トップでの久々3-6-1。これは、ワシントンが謹慎中だった4月の鹿島戦以来ですか。相馬も大宮戦以来の先発。
 満身創痍、ということになるんでしょうが、そのわりには悲壮感やら優勝争いのプレッシャやらも、ちっも感じられず。「ACL終わったー」という解放感からなのか、選手の入れ替え、配置替えによって気分転換されたのか、なんだか久しぶりに、普通に楽しそうにサッカーしてるように見えました(最後はさすがに疲れてましたが)。最近の阿部とかもうそれは凄惨な姿でしたから。清水がガツガツ来なかったというのもありますけど。
 見てる方としても、やっぱり3-6-1は楽しい。ポンテ、長谷部、啓太、阿部のボックスとかワクワクせざるを得ないでしょう。まあ、それは開始10分で終わってしまいましたが。以前に「3-6-1の良い所はなんとなくでは上手くいかない機能性の低さ」とか書きましたけど。これは3-5-2ほど分かりやすくない分、停滞しやすい、だけどその停滞で選手間の関係が煮詰まっていくことによって一瞬の爆発が生まれやすい、というようなことが言いたかったんですが。とすると、濃いシーズンを過ごして既に煮詰まりきってる今の選手たちにポンと3-6-1やらせるとか、これはもうたまらないものが。
 そして、そんなドロドロな3-6-1の方が、これまでチームで浮きがちだった相馬が程好いアクセントとして活きやすいというのは、意外、ではなく当然なんでしょか。この日は、簡単に叩くべきところでは叩いて、スペースあればお得意のドリブルで血の流れを良くして、というプレイの選択が大分改善されてた気がします。まあ、周りの選手が相馬の判断力をまだ信用してないのか、相馬がボール持っても「いつものように勝手にやってくれ」と言わんばかりに誰もフォローに寄って行かず、孤立無援で憤死する場面がちょいちょい見られたのは、ちょっと気の毒というかハラハラしましたが。いっそ永井や闘莉王みたいに、もっとサイドに開けだのと味方からガンガン注文つけられてる方が安心なくらいです。
 相馬先発によって久しぶりに本職の右に回った平川も、スピードを活かしてノリノリ。サイドが変わって縦に行きやすくなってた分、今年のプレイの幅を身に着けた平川"改"というより、「去年までの平川の絶好調時」というようなプレイぶりの印象でしたが。しかし平川は本当に今年伸びました。リーグ開幕前のゼロックス杯で、ガンバの安田にボッコボコにされてたのは何だったんだという。あの後、干されて、さらにケガで戦線離脱したんですが、そのリハビリ中に何か掴んだのか(確か、左サイドからのクロスを一心に練習してエンゲルスに良くなったと誉められた、みたいな記事を読んだ記憶あるんですが)。また改めて書くつもりですが、今の平川は「スピードを足して馬力を引いた山田さん」とでも言っていいほどのトータルバランスだと思います。
 さて、あと2試合。ガンバが相変わらず勝手にコケたことで、優勝マジック勝ち点2。次は、そのガンバを抜いて7連勝で2位まで浮上してきた鹿島との優勝かけた大一番。うん、大一番、ですよね間違いなく。この清水戦もですけど、なんかあんまりにも緊張感とか感じなくてちょっと自分が心配なんですけど。

到達。


 ACL出場を決めた2006年元日。あれから2年弱。トミスラフ・マリッチが拓いたアジアへの道は、その頂点にまで繋がっていました。優勝おめでとう、浦和レッズ

ACL決勝第2戦:浦和 2 - 0 セパハン
得点者:22' 永井雄一郎(浦和)、71' 阿部勇樹(浦和)


 長い戦いでした。グループステージ緒戦のペルシク・ケディリ戦が3月のことですから、あれから8ヶ月ですか。振り返っても霞んで見えないような遠い出来事のよう。よくぞここまで辿り着いたものです。ここに来るまでのおそるべきメンバ固定による疲労の蓄積は限界に達していたはずですが、それでもこの日の浦和は"ベスト"でした。今大会、最後となるゴールを決めたのが、阿部勇樹であったというのが象徴してます。開始3分で腰を抑える素振りを見せていたんですが、それでも彼はベストであり続けました。
 それにしても、2得点に絡んで、大会MVPまで掻っ攫っていった永井。まさかのMVPには思わず笑ってしまいましたが。お前かよと。しかし、元旦の天皇杯決勝に、8月のアウェイG大阪戦、そしてACL決勝と、今年の節目の試合は全部永井。それでいながら、これでも能力を完全に発揮してるとはとても見えないという。実はとんでもないモンスターなのか。そうでもないのか。


 この優勝で、アジア王者としてクラブW杯に出場する権利を得たわけですが、「ACミランと対戦!」とか言われても、まだあまり現実感がなくて気持ちが沸かないというのが正直なところ。まあ、ミランの前にセパハンとの再戦(多分)が待ってるというのが水を差してるというのもありますけど(悪評高い開催国枠を撤廃させるには、ここでミランを前にセパハン相手にズッコケてどっちらけ、というのが一番効果的という気はしないではない)。むしろ、今はこの優勝による来年のACLのグループリーグ免除の方が嬉しいくらいです。あのシーズン初っ端から中国やら東南アジアやらを引きずり回される戦いは、楽しいっちゃ楽しいのですけど、さすがに今年やってまた来年というのは勘弁して欲しかったですから。
 さて、次はJリーグ。ここまで妥協せずに来たんです、いただきましょう。